手法と限界
このデータは「作り方を全部見せる」ことを信頼の担保にしています。批判できる設計は品質そのものであり、 指摘は次の改良の指示書です。全文は Zenodo(DOI 10.5281/zenodo.21282795)の METHODOLOGY.md を参照してください。
問い
2014年の増田レポート(消滅可能性都市)以降、予言を受け取った自治体が行動を変えたかを測ります。 「紙の反応」= 地方版人口ビジョンの目標人口の楽観度、「物理的行動」= 公共施設延床面積の変化実績(2014→2023)。 予言の当否ではなく、予言後の適応行動の分布を計量します(予言の是非を争うどちらの陣営とも距離を取る第三の位置)。
データソース(5系統)
- 人口ビジョン展望人口: 各市が独自に掲げた2040/2060展望(目標)人口。地方版人口ビジョン(第1期 2015–16年策定)
- 公共施設延床面積: 建物延床面積 2014→2023。公共施設状況調/公共施設等総合管理計画とりまとめ(総務省)
- 基準人口推計: 社人研2013年推計(そのまま推移した場合)2015–2040。国立社会保障・人口問題研究所
- 統制変数: 財政力指数等の主要財政指標(総務省)
- 実人口(市ページの人口推移グラフ): 国勢調査 2010–2020・令和7年国勢調査 人口速報集計(2026年5月公表・2025年は速報値)。住民基本台帳に基づく人口はデータセットには含むが、国勢調査と統計の作り方が異なるためグラフには不使用
人口ビジョンの目標人口を全国横断で集約したデータは既存に存在しませんでした(本データセットの新規性)。
抽出(LLM grounding)
gemini-2.5-pro + Google Search grounding の単一コールで、発見・読取・展望人口抽出を一括実行。
最重要の取り違えガードとして、社人研推計(そのまま推移した場合)を明示的に対象外とし、自治体独自の展望(目標)値のみを取得
(図で両者が並ぶ場合は必ず展望側・temperature=0)。万人表記は人に換算。
展望人口を2060年でのみ掲げる市は、展望カーブ/表の2040年通過点を別コールで回収(本文明記またはグラフ目視読取のみ採用・直線補間はしない)。
回収値は note_quality=recovered で隔離し、全国集計(HEADLINE)からは除外しています。
検証フラグ(各市ページのバッジ)
- ✓ 検証済: 抽出確信度 high。社人研推計との取り違え検出(W_COPY)・極端値検出(W_EXTREME)等の自動検証を通過
- ▢ 未検証: 確信度 mid/low。原典での確認を推奨
- ◇ 回収: 2060展望のみの市の2040通過点を回収した値(本文明記/グラフ読取の別を表示)。HEADLINEから隔離
- ⚠ 注記: 品質注記あり。重要な用途では原典確認を推奨
ファネル(母集団 → 分析対象)
市部 790 → 2040展望値あり 723 (92%) → 検証通過パネル 697 → HEADLINE 624
(直接658 + 回収65) (社人研欠測14・外れ値12を除外)(回収・東日本2011被災市を除外) 本サイトの個別ページは検証通過パネル697市を全て掲載し、 全国集計(r・平均等)はHEADLINE n=624に基づきます。 HEADLINE非算入の市は各ページに「参考値」と明示しています。
災害交絡の扱い
延床面積の観測窓は2014→2023年です。東日本大震災(2011年)は窓の内側にあり、 被災除却・復興建替が延床の変化に混入する(床が「増」に振れる)ため、被災市はHEADLINEから除外しました。 能登半島地震(2024年)は窓の外側で延床には交絡しないため残置し、各ページに参考注記を付けています。 除外はzスコアで防御可能な保守的判断です(極端値の頑健性検査はin/out両方を提示・結論不変)。
4象限の分割線の根拠
X軸(楽観度)は全国中央値(+9.4%)で、Y軸(延床変化率)は0で機械的に分割しています。 楽観度は90%が正の側に偏った分布のため、0分割では象限がほぼ空になり、中央値分割が分布の記述として適切です。 延床変化率は増/減という自然な意味の境界がある0を採用しました。 ラベルは評価語を含まない中立文で、どの象限にも良い/悪いを割り当てません。
- 目標も強気・床も増えた
- 目標は強気・床は減った
- 目標は控えめ・床は増えた
- 目標は控えめ・床は減った
既知の限界(先に言う)
- 被説明変数の粗さ(最重量): 延床面積は「適応」の粗い代理です。廃校放置(床は減らないが実質休止)、 複合化(総量微減でも適応進行)、指定管理/民間移譲(統計から消える)、庁舎建替の一時増を捉えません。 r≈0は「切断」だけでなく「測定が粗い」との合成値でもあり、測定誤差は相関をゼロ方向に希釈させます。
- 出典URLの恒久性: source_url の一部は検索基盤のリダイレクトURL(非恒久)です。 正規PDFへの解決とアーカイブは継続作業で、重要な用途では原典確認を推奨します(該当ページには明示しています)。
- 回収値の目視読取: 回収値(◇)のうちグラフ読取分は誤差を含みえます。HEADLINEからは隔離済みです。
- 因果は主張しない: 楽観度は内生的(財政力等と相関)です。本データは記述統計の基盤であり、 相関から因果は識別しません。 実測では、財政力指数(2015年度・策定当時)と楽観度は r=−0.22 (n=624、95%CI[−0.30,−0.15])で、 2022年度の財政力でも r=−0.23(95%CI[−0.30,−0.15])と 時点によらず安定しています(出典: 適応実行度パネル v1.0.0 + 総務省 主要財政指標(財政力指数 H27/R4))。
観測の反作用の自認
このサイト自体もひとつの観測装置であり、観測は観測対象の行動を変えます。 もし悲観的(=推計に近い現実的)な目標を書いた自治体が不利に見える見せ方をすれば、 次の計画で正直に書く動機を削ぎ、データそのものを劣化させます。 だから本サイトは評価を出力せず位置を出力し、順位を作らず、どの象限にも良し悪しを割り当てず、 悲観的に書くことを罰しない表示を設計原則にしています。この原則自体を検証可能なかたちでここに明記します。
再現性
抽出・検証・集計の全スクリプトと出版用データは Zenodo(DOI 10.5281/zenodo.21282795・v1.0.0)に固定しています。 本サイトはそのCSVを再計算せずに表示するだけで、サイト独自の統計は作りません(食い違い防止)。